カントリーガゼット

カバー・ブリッジ

ペンシルバニア・ダッチ・カントリーの名物として知られているものに、カバー・ブリッジがあり現在も存在しています。文字通り、屋根や板塀で覆われた橋のことで、納屋の形をしたのもが、橋の上に乗っていると想像してみて下さい。このカバー・ブリッジは、あちらこちらに見られ、一番長いものは、105メートルもあります。たいてい赤か白に塗られていてその芸術的な構造と共に人目を引いています。

18世紀初頭から20世紀始めにかけて、およそ一万本のカバー・ブリッジが造られ、その内の830本余りがペンシルバニアに残っているということですから、人々とカバー・ブリッジの親密な関係がうかがえましょう。

なぜ、橋が覆われているのかということには色々な説があります。雪が積もって橋をふせいでしまわぬ為、馬が流れる水を見てこわがらないよう渡れる為、外観が納屋のようなので動物達が自然に渡れる為、木が早く腐ってしまうのを防げるから、などなど・・・。「全体の美を考えて」と言った人もいます。

キス橋・願い橋

昔、カバー・ブリッジは別名”Kissing and Wishing Bridge”と呼ばれていました。女性と渡る時は、その女性にキスをしても良いとか、この橋を渡っている間に願い事をすれば必ず叶うなどと言われていました。デート中のカップルのかくれ場所となったり、雨よけの場となったり、夏にはつり場や子供達の飛び込み台、暑さ凌ぎの場となるなど、大活躍だったようです。

最初の頃は、両側通行でなかったので、渡る前に、入り口で対向者が来ないかどうか確かめていたようですが、時には中ではち合わせして、ケンカになったこともあったようです。通行料を取っていた橋もあって、歩行者、らば、家畜は1セント、2頭立ての馬車なら10セント、という具合でした。今日では、通行料の表示は、重量制限の表示に変わっています。

遥か昔に造られたこのカバー・ブリッジに馬のひづめの音を聞き、のどかさを偲び、旅愁を呼び起こされるのは、私だけでしょうか。

ペンシルバニア・ダッチカントリーの台所

私は、外が凍てつく様な寒さに覆われているとき、暖かい台所に立って料理にいそしむのが好きです。「食物は、労働に対する神からの報酬で、神からの贈り物」と信じているアーミッシュの人々は、素朴でおいしい料理の数々を祖先から代々受け継いでいます。そこで、おいしい料理を作るのにはその料理に合った台所用品が必要です。あるいは、言い方によっては台所用品というものはつかっている人の生活感をあらわしているものです。

古い料理道具や台所用品に目がない私にとって、アーリー・アメリカン(イギリス植民地時代)の人々が使っていた物の中には、興味をそそられる物がいっぱいあります。一見しただけでは、何に使うかわからない物や、ガラクタのような物もありますが、そこに秘められた私達の祖先の、生活の知恵を窺い知ることができるので、なんとなく親しみが湧いてくるのです。例えば、先の部分が針金のメッシュでできたたましゃくし。とうもろこしを煎って、はじけさす時(ポップ・コーン)につかったもので、暖炉の火で調理するために 柄が長くなっています。このたましゃくし、教会で礼拝中に奇付金を初めて集めるようになった時、最初に入れ物として使われたフライパン状のものだと、音がして他人の奇付金額を推測されてしまうので、きまり悪さを解消するために利用されたのです。

ダッチ・オーブン

主婦達は、週に一度か二度はパンをオーブンで焼いていましたが、ビスケットやケーキなど簡単なものを焼く時には、ダッチ・オーブン(Dutchoven)と呼ばれる3本の鉄製の脚のついた鍋が使われ、鍋の底だけでなく、蓋の上にも炭火をのせていたようです。

真ん中の図が何かおわかりになりますか?これは鉄製の手動武器具でさくらんぼの実をつぶさずに種と分けるものです。

右の図はおわかりですか?これは1840年代に発明されたりんご皮むき様です。手で作業をした方が早いとお思いでしょうが、100個単位となってくると、これでスルスルむいた方が早いのです。

ヘックス・サイン

ペンシルベニア・”ダッチカントリー”の中で目立つものの 一つに、色づかい鮮やかなヘックス・サインをつけた大きな赤い納屋があります。左図の様に、ドアや窓も白いペンキで縁どられ、観光客の興味を魅きます。

ヘックスとは魔法という意味で、つまり、この魔法のサインによって悪魔払いができたり、幸運を呼び寄せることができると 信じられた時期がありました。ですから、納屋につけたのも、もともとは、家畜や収穫を守るためでした。しかし、やがて、家の目印としての役目も果たすようになりました。悪霊を信じていた私達の先祖は、それを取り除くために幸運を呼ぶシンボルを定着させたのでした。円形の中に描かれる絵には、いろいろな意味がこめられています。

夫の料理法

今日はとっておきのレシピをご紹介します。すでにお料理なさっている方、これからお料理なさろうとする方も是非ご参考にされてはいかがでしょうか。

魚屋でサバやサーモンを買う時のように、表面の色・ツヤなどの見かけだけで判断しないでそれぞれの持ち味を考えて、選ぶこと。人任せにせずに吟味すること。

◆ 作り方 ◆
1. 材料を「安楽」と呼ばれる強い絹糸で縛り鍋に入れる。この時「義務」と呼ばれる弱い糸で縛ると生物なので、ゆるんで鍋から飛び出し、炎で焼けてしまうこともあるので、気をつけること。
2. 1.の鍋を清らかで落ち着いた「愛の日」にかけ、すがすがしく、ほがらかに煮る。たとえ、ブツブツ、グツグツ言っても気にせずに、静かに見守ること。
3. 「キス」という砂糖を少々入れる。スパイス類は、もしも入れる必要があると思ったら、その量は貴方の判断力が決め手となる。煮えたかどうか、つっついたりせず、やさしくかきまぜ、見つめてあげること。


◆ 注意すること ◆
せっかく、選んだ良い材料も、イライラした動作や言葉でシチューの様に煮込んでしまったり、ローストしたり、新鮮なままピクルスにしてしまうと、もったいないので、料理法を守って材料を生かすようにすること。使用する鍋は、磁器にこしたことはないが、安物の土器しかないなら、手入れを行き届かせること。 このレシピに忠実に従ってお料理して頂ければ、そして、出来上がった料理を冷たい所においたりさえしなければ、貴方や貴方のお子さんの口にあったおいしいものとなることでしょう。

良き人生の料理法

愛情 カップ1杯
やさしさ カップ1/2杯
感謝の気持ち カップ1/2杯
楽しい仲間 カップ3杯
賞讃 小さじ3杯
厳選された忠告 小さじ1杯
喜び カップ1杯
悲しみ ひとつまみ

1. まずカップ1杯の愛情とカップ1/2杯のやさしさを混ぜ合わせる。
2. そこへカップ1杯の感謝の気持ちとカップ3杯の楽しい仲間を交互に少しづつ加える。
3. ふるいにかけた小さじ3杯の賞讃を入れる。味付けには小さじ1杯の厳選された忠告を使う。
4. 軽くたたみこむようにして、カップ1杯の喜びを、ひとつまみの悲しみと共に加える。
5. 4を静かに、ゆっくりと、小さな汚れのない心に注ぎ込み、熟成するまで焼く。
6. よく熟成したら、とり出して社会に出す。